前略、
ポルトガル語、オランダ語起源の外来語に続き、ドイツからのものを紹介します。
ゼッケン Zeichen[ツァイヒェン] 合図、目印、記号
ドーラン Dohran[ドーラン] ドーランを作っている会社名
ボンベ Bombe[ボンベ] ボンベ、爆弾
ガーゼ Gaze[ガーゼ] ガーゼ。これはパレスチナのガザ地区のGazaが語源。
ギブス/ギプス Gips[ギプス] 石膏、ギプス
ルンペン Lumpen[ルンペン] ぼろ着
ワッペン Wappen[ヴァペン] 紋章
ザック Sack[ザク] 袋
ヤッケ Jacke[ヤケ] 上着
このほかにも、医療、登山、スキー用語はドイツ語の独擅場です。
ほかのヨーロッパからではフランスとロシアからのものがいくつかあります。
まず、フランス語から。
バリカン Barriquand et Marre[バリカン・エ・マール] 製造会社の名前
ズボン jupon[ジュポン] ペチコート。なぜペチコートがズボンになったのでしょう
綱引きをするときのかけ声の「オー・エス」の…
エス hisses[イス] 動詞hisser(引き上げる、持ち上げる)の命令形
アンツーカー en-tout-cas[アン・トゥ・カ] 全ての状況で。英語に当てはめるとin-all-case。
つぎにロシア語。
イクラ икра[イクラ] 魚卵
カンパ кампания за сбор денег[カンパニヤ〜] 募金運動
アジト агитпункт[アジトプンクト] 扇動本部
セイウチ сивуч[セヴチ] とど。ロシア語のセイウチはまた別の語らしい
トーチカ огневая точка[オグネヴァヤ・トーチカ] 火力の拠点
さすが共産主義育ての親の国といった語が見受けられます。
ヨーロッパからの最後のおまけとして英語からの意外な外来語を少し。
ジョッキ jug[ジャグ] ジョッキ
ズロース drawers[ドローワーズ] パンツ、ブリーフ
ハツ(焼き肉)hearts[ハーツ] 心臓
ゴロ grounder[グラウンダー] ゴロ。ゴロゴロだからじゃないんですね。
チック cosmetic[コスメティック] 化粧品
ワイシャツ white shirt[ホワイト・シャート] 白いシャツ。白くないものはワイシャツじゃないということ。「Y」シャツではないのだ。
ポチ spottie[スポッティー] 斑点のある。ポチが外国の名前だなんて、知ってましたか。
これまでの外来語は全てヨーロッパからのものでしたが、ヨーロッパ語以外の外来語も数はそれほど多くはありませんが、もちろんあります。
いくつか紹介しますが、中国からの言葉は日本にとって外来語とはいいがたいので意外な感のあるものだけを取り上げます。
シェルパ sher-pa(チベット語) 東部の人
カボチャ Camboja(ポルトガル語) カンボジア
キセル khsier(カンボジア語) 管
カーキ khaki(ヒンディ語) 土色の、ほこりっぽい。
ジパング 日本国(中国語) 日本。当時の「日本国」中国語読みjihpunkuoがマルコポーロによりジパングと紹介され、後にジャパンになった。
カバン 夾板(中国語) 箱
パッチ (朝鮮語) ズボン
チョンガー (朝鮮語) 独身男性
旦那 dana(サンスクリット語) 施し(する人)。サンスクリット語起源の仏教用語は中国経由でたくさんはいっているのでほかは取り上げません。
アルカリ al-qaliy(アラビア語) 焼いた灰
アルコール al-kohl(アラビア語) コール炭
そ の昔、アラビアでは天文学や科学(錬金術)が発達した時期があり、それらの進んだ言葉がヨーロッパに輸入されました。alはアラビア語の定冠詞、英語の theと同じで、アルタイル(al-tahil/飛ぶもの、鳥)やアルコーブ、アラー(al-ilah/the god)、アルファルファ(al-fasfasa/良質のかいば)、錬金術(アルケミー)、代数(アルジェブラ)も同じです。
そのアラビアにある袖の長い上着にjubbaと呼ばれるものがあるそうです。このjubba、実はたくさんの日本語の外来語の語源となっています。
アラビア語jubbaは、英国経由でjumper→ジャンパーとなり、フランスに入ってjupon→ズボンとなり、ポルトガルのgibaoを通って襦袢(じゅばん)となっていったのです。
同じように、最初に紹介したチョッキ(jaque)も、ヤッケ(Jacke)やジャケット(jacket)と同じルーツを持っているということは、そのものの形態と綴りを見ていただければ分かっていただけると思います。
日本に入ってきた外来語だけ見ても世界の言葉の不思議なつながりが感じられたのではないでしょうか。今回紹介したのは、いわゆる借用語(loan word)と呼ばれるものがほとんどですが、世界の言葉には単語の貸し借りだけでないもっと深い言語の根元までに至るつながりがあります。
草々
前略、
外来語の反乱が指摘され始めて、すでにかなりの年月が経ちます。これまで指摘を受けてきたその反乱軍の主力はほとんどが英語でしたが、最近になってフランス語やスペイン語、イタリア語なども増えてきているようです。これは商品名などに特に多いことから、英語に手垢がつきはじめ、新鮮さやかっこよさが失われてきた結果ではないかと考えられます。
「チョッキ」と呼ばれていたものが「ヴェスト」(vest/英)と呼ばれるようになってもうかなりになりますし、「ジャンパー」(jumper/英)と呼ばれていたものは、今では「ブルゾン」(blouson/仏)と呼ばれています(正確には全く同じものではないようですが)。
今、使った「チョッキ」という言葉ですが、何語だと思いますか。固有の日本語ではなく外来語くさいというのはカタカナで書くことからも推測できますし、英語ではなさそうだというのも分かりますが、昨日今日出てきたはやりもの外来語ではなく、完全に日本語になじんでしまっているので何語なのか、語源は何なのかなどということがほとんど意識されなくなっているのです。
ちなみに、「チョッキ」というのは、ポルトガル語のjaqueが訛ったもので、上着という意味です。
今回はこのような日本語になじんでしまって元が分からなくなっている外来語や、意外な国からきている外来語を紹介します。
外来語を少し調べてみると、日本語になじんだ外来語というのは、英語からのものは非常に少なく、いくつかの特定の国からきたものが多いことが分かります。それらの国は早くから日本と接触があったため、その言葉は長い時間をかけて日本になじんでいったのです。
それらの国というのは、先程の「チョッキ」の語源の国であり、キリスト教の布教にかけてはどこの国にも負けなかったポルトガルと鎖国の江戸時代の中での数少ない接触相手だったオランダです。
まずは、ポルトガル語起源の外来語から見ていきましょう。(以降に出てくる単語の読みはあまり信用しないでください)
カルタ(歌留多) carta[カルタ] 手紙、トランプ。英語のcard。
カッパ(合羽) capa[カパ] マント、カバー
コンペイトー confeito[コンフェイトー] 砂糖菓子
ビードロ vidro[ヴィドロ] ガラス
「ピンからキリまで」の…
ピン pinta[ピンタ] 小さな点。英語のpoint。
キリ cruz[クルス] 十字架
「このアマ、ふざけやがって!」の…
アマ ama[アマ] 乳母
シャボン sabao[サボン] 石鹸
じゅばん(襦袢) gibao[ジバン] 胴衣、上衣
チャルメラ charamela[シャラメラ] 木管楽器の一種
バッテラ bateira[バテイラ] 舟、ボート。舟型の入れ物に入れて作るから。
ボーロ bolo[ボル] 球、ケーキ
ボタン(釦)botao[ボタン] ボタン、芽、つぼみ
他にはジョーロや天麩羅などもポルトガル語起源なのですが、語源である単語が定まっておらず、いくつかの説があるようです。外来語なのに漢字で書ける単語が多いというのは、中国経由の外来語以外では他にあまり例を見ません。ポルトガル起源の外来語の馴染み具合、古さが感じられます。
次はオランダ語からの外来語です。
カラン kraan[クラーン] 栓、蛇口
ゴム gom[ゴム] ゴム
コップ kop[コップ] コップ、頭部
スコップ schop[スホップ] スコップ、シャベル。ちなみに、シャベルはshovelで英語。
ズック doek[ドゥーク] 織物
「博多ドンタク」の…
ドンタク zontag[ゾンタフ] 日曜日。だから、半分休みの土曜日は、半分日曜→半分ドンタク→半ドン
ビール bier[ビール] ビール
ピント brandpunt[ブラントプント] 焦点。英語ではfocus
ポン酢 pons[ポンス] 橙などの柑橘類の絞り汁、パンチ(現地ですでに死語となっている)。
パンチとは飲み物、「赤玉パンチ」のパンチ(これもほぼ死語ですね)。パンチのほうの語源は、茶、アラク、砂糖、レモン、水の五種のものを混合したインドのカクテルの名前で、ヒンディ語の「5」を意味するpanch からきている。
マドロス matroos[マートロース] 船員
メス mes[メス] ナイフ、小刀
ランドセル ransel[ランセル] 背嚢、ナップサック
カルキ kalk[カルク] 石灰
ブリキ blik[ブリク] ブリキ
レッテル letter[レテル] 文字
ポマード pommade[ポマード] ポマード
日本語に馴染んでるといえば、やはり以上の二カ国の言葉が多く、以下に紹介する国の外来語は、外来語臭さが抜けきっていないものも多いですが、意外な感じがするものも多いはずです。
つづく
草々