[カナダ]ロッキー山脈縦走記 その3

5月10日
ユース・ホステルには掃除などの仕事を宿泊者で分担してやらなければならないところがある(choresという)。ロッキーのユース・ホステルはほとんどが1人か2人だけで管理しているので仕事は宿泊者に割り振られる。この日は薪割りをやった。

5月11日
目覚めると外が真っ白になっていた。夜の間、ずっと雪が降ったようだ。まだかなり曇っているので、出発は延期する。もう5月だというのに。

5月12日
雲の間から青空がのぞいている。出発だ。次のユース・ホステルまでは64キロで、この行程の中で最も距離がある。
その間にクロウフット氷河、ボー湖、ボー氷河があり、その後の坂道を上りきったところが、このカナディアン・ロッキーのバンフからジャスパーを結ぶハイウェイの最高地点であるボー峠(2066メートル)である。
その辺りから少し支線に入っていくとペイト湖の見える場所に出る。このなめくじの形をした湖も、湖水の色がとても美しいことで有名なのだが、水は完全に氷結していて上から雪が積もって真っ白であった。この頃は比較的観光客も少なくていいのだが、まだ雪も多いし少々時期が早すぎたようだ。



夕方、ランパート・クリーク・ホステルに到着する。
ロッキーもこの辺りまで来ると野生動物が増えてくる。バンフでも少し街から離れれば、鹿やビッグ・ホーン・シープはいくらでも見られるが、町の近くには出てこない動物も多い。ここにはハイウェイは通っているものの人里からはだいぶ離れている。ここまで来て熊を見ることができた。
最初は遥か彼方の道を横切るでっかいグリズリーだったが、二度目はユース・ホステルのすぐ近くの道路の脇の草を食べている黒熊を10メートルほどのところからずっと観察することができた。


5月13日
この宿の近くには、特に見るところはないのでのんびりと過ごす。
その日の朝に出発していった人がスパゲッティとマッシュルームの缶詰の残りを置いていってくれた(あるいは、単に忘れていった)ので、それをありがたくいただく。ロッキーにおいて食料は貴重品なのだ。
レイク・ルイーズを出てからは店らしい店は全くなく、一度、ハイウェイの合流点にドライヴ・インがあったが、売店に食べ物は土産物とお菓子などしかなかった。
今回、ぼくは荷物が重くなるので食料はほとんど持ってこなかった。ロッキーのユース・ホステル・ガイドの小冊子には、どのユース・ホステルに食料品の買い置きがあるかが示してあり、この買い置きの食料品だけが生きる糧なのである。

5月14日
出発する。バンフを出て、ボー峠で2000メートルを越した高度は、ランパート・クリーク・ホステルの辺りで1500メートルぐらいまで下ってきていたのだが、再び、道は上り始めた。急激に、長く、しつこく。
いつまでも続く上り坂に音を上げ、自転車を降りて押して上る。何キロもしつこい上り坂が続いて、再び、2000メートル近くまで上ったところがサンワプタ峠で、そのすぐ手前にヒルダ・クリーク・ホステルがある。
北に来るに連れて、だんだんとユース・ホステルの設備、環境が悪くなってきた。これまでは寝室用の小屋は男女別になっていたが、ここは一つだけで男女共同、水道替わりの小川もこれまではすぐ近くに流れていたのに、5分ほど歩いていかなければならなかった。
しかも、ガイドには食料品の買い置きありと書いてあるのに実際にはなかった。この日は幸い、前のユース・ホステルから持ってきていたスパゲティが残っていたので、夜はそれを食べた。そしてさらに悪いことに、ここには2泊ぐらいしようと思っていたのに、次の日に団体の予約が入っていて満員になるというのだ。
食料もないので、その次の日に出発することにした。特に問題はない。次の日の天気のことが少し心配だが、次のユース・ホステルまでは遠くないし、峠はほぼ登り切ってしまったので多少の天気の崩れでは問題はないだろう。

つづく