ミャンマーには車が多い。
ミャンマーに田舎な国を想像していった人たちは意外に都会で騒がしいミャンマーの町に驚いてしまう。ぼくのようなラオスが大好きな人間は、ミャンマーも勝手にラオスのような「なにもない田舎ないい国」ではないかと期待して行ってしまうので最初は面食らうのだ。
ミャンマーには車が多くて、そのほとんどが日本の中古車だ。
まずヤンゴンの空港に降り立ったとき(今どき珍しくタラップで滑走路に降りる)から名古屋の市バスが出迎えてくれる。広告やペイントも日本にあったときのままだ。
町を走るバスも日本各地からやってきた中古バスである。
長距離バスだと「○○観光」とボディにペイントされたままの大型の観光バスが走っている。
日本の車をミャンマーで使うには不都合な点が多々ある。
ミャンマーは「車は右側通行」で「距離はマイル表示」なのだ。
元イギリスの植民地で日本軍にも占領されたことがある国だが、なぜか右側通行(隣国タイはこれまたなぜか左側通行)で、これは右ハンドルの日本車を走らせるには不都合で長距離バスに乗っているととても怖い。運転手から前の見通しが利かないので追い越しがとても危険なのだ。
もちろん対策もなされていて長距離バスだと交代の運転手や助手がのっているので、左側の窓やドアから乗り出して前を確認する。
それから独特のウィンカーの使い方がある。
日本なら普通追い越すほうがウィンカーをつけて知らせたりするらしいが、ミャンマーでは追い越されようとしている前の車がウィンカーを出して後の車に追い越しても大丈夫だということを知らせるシステムになっているようだ。
市バスにはさらに問題があって日本の市バスは乗降口が左にしか付いていないのである。つまりミャンマーだと道の真ん中に向いてドアがついていることになり、さすがにこれでは危険だということでミャンマーの市バスは右側に無理矢理ドアを増設して使っている。
距離にマイル表示をつかっているのでスピードメーターが分かりにくいだろうと思ってミャンマー人に訊いてみたが、スピードメーターはほとんど壊れているので問題ないとのことだ。まあ、みんなかなり古い中古車なのでそれほどのスピードは出ないだろう。
日本のままのペイントで走っているのはバスだけではなく、乗用車やピックアップトラックも日本にあったままのペイントやバンパースティッカーで走っている。
ヤンゴンでは日本の自動車教習所の教習車がそのままのボディペイントと「仮免許練習中」というプレートを後ろにつけて走っていた。しかもその車はタクシーとして使われていた。仮免許のタクシーはいやだな。
以前行ったことのあるパキスタンでもそうだったが、日本語のペイントはかっこいいと見なされているようで、後から長方形で囲んだ「自家用」のへたくそな文字を書き込んだりしているものもあるし、ほとんど意味不明なものもある。
よく見かけたのが「勇者が古都にあいまみえる」とペイントしたものだ。
だれかが意味も分からずにどこかの日本語の資料からトレースした雛形が広まったということなのかもしれない。
ミャンマーのような豊かとはいえない国でなぜこんなに車が多いのかということは疑問に思っていたのだけど、あるミャンマー人に訊いてみたところミャンマーは産油国であるとわかってかなり納得がいった。
しかし車が多い割には道の整備がよくなくて、特に乾期には町中でも砂ぼこりがたち、長距離バスに乗ると着く頃には車内は砂ぼこりだらけ。体や持ち物が汚れるくらいはたいしたことないのだけれど、呼吸といっしょに体内にはいるので、ミャンマーにいる間中、のどの痛みと咳、痰には悩まされた(マスクを持っていくとよいかも。暑いからだめかな?)。
日本の中古車が入ってくる前はアメリカ軍のウィリスジープがたくさん走っていたそうで、田舎に行くともう明らかに何十年もたっているだろうと思われるのにまだけっこう現役で走っています。
最後にヤンゴンの空港の滑走路で走っている名古屋の市バスの「次止まります」ボタンはまだ使用可能であるということ付け加えさせていただく。
草々