6月16日(金)曇り
朝、出発するときに宿の若奥様がおにぎりを持たせてくれた。うれしい。
本州最北端をめざす。今日も曇って霧が出ている。太平洋側から峠を越えて反対側に出るとその霧がうそのように晴れてしまった。どうやら下北半島の太平洋側はそういうところらしく、ここを走るときは陸奥湾側を走るのが定石のようだ。
大間崎は最北端の岬というイメージとはかなりかけ離れていて、人がたくさん住んでいる町のただの角っこという感じ。
岬のすぐ近くになんとキャンプサイトがあった。しかも無料。おまけにかなりいい炊事棟まであって、炊事場とテーブル、椅子とコイン式のガス台まであった。キャンプサイトには先客が一人だけいた。1300ccのバイクで旅行中の男性。彼も北海道をめざしていた。
(71.59km/4h43m・計1252.8km)
交通事故に遭遇。居眠り運転か?
奥にあるのが炊事棟
炊事棟の中
6月15日(つづき)
出発。そのまま、太平洋側を北上。昼になっても濃霧は全く晴れず、霧雨に近く、じっとしていれば霧なのだが、走り出すと体中べっちょりと濡れてしまう。
六ケ所村に入り、原子力発電所などが続く。一年中、こんな天気ではないだろうが、原発などがかたまってある理由がわかったような気がした。
キャンプできるようなところも見つからないので前に進むしかなかった。風まで強くなってきて、もう最悪の状態。
疲れてしまって、もうどこでもいいって感じで、海岸に入っていってテントを張る。朝から何も食べてなかったので、飯を炊きカレーライスを作る。風は強くなっていた。
カレーライスを食べていたら、強い突風が吹いた瞬間、テントが体にぶち当たってきた!
テントを地面に固定してあるペグがはずれ、テントが突風にあおられて飛ばされそうになっていた。地面がやや固い砂浜程度のところだったのでペグがはずれやすかったのだ。
テントの中に荷物と自分がいて重しになっているので、その場になんとかとどまっている状態。テントの中から必死になって押さえるが、そんなことをしたからどうなるものでもない。風は治まる様子がないからこの状態から再びテントを元に建て直すのは完全に無理だった。
とりあえずテントの中の荷物をまとめ、外へ出て、ポールをばらして、フライシートが飛ばされないように注意しながら、なんとかテントをひとまとめにする。ここで何かが飛ばされてしまったらもう取り戻すことはできない。
とりあえず抱えられる荷物を持って、村の方へ走る。強風の吹く中、たまたま歩いているおじさんがいて、この村に民宿があるかどうか訊ねる。宿がないとかなり絶体絶命だ。天気予報では夜から雨が降るといっていた。
あるというので、場所を聞き、そこへ向かう。民宿に着く、部屋は空いているという。料金を聞き、一切値切らずに投宿する。もう一度、往復して残りの荷物と自転車を回収して、やっと一息ついた。
熱い風呂に入り、洗濯をする。ラジオが東北北部も梅雨入りしたことを伝えていた。ひさしぶりにふとんで眠った。
(88.52km/5h20m・計1181.2km)
6月15日(木)曇り/濃霧
馬淵川の川原の野球グラウンドのレフトの外野の芝生の上に(「の」の連続)テントを張り、ぐっすりと休んでいると、テントのフライシートをタンタンとたたかれ、なにやら外から声をかけられて目覚めた。
時計を見ると朝の5時前である。
なんだよ、こんな朝早くから。どうせ早起きのじいさんかなんかが散歩の途中でキャンプなんかするなとかおせっかいやきに来たんだなと思い、相手にせずにそのまま寝ていた。
しかし、なんだか外に人の気配があり、それも何人かいるようで全く立ち去る気配もない。おまけに一定間隔で、パン、パンという小さな聞き覚えのある音が響いていた。車のエンジン音も断続的にする。
これは何かおかしいと思って、外を見てみると…。
平日の朝の5時、濃霧の中にいい年をした野球のユニフォーム姿の大人たちがグラウンドに散らばって、キャッチボールをしていた。さらにつぎつぎと車で集まってきていた。
会社に出社する前に草野球をするため、川原の野球場に集まってきていたのだ。
不幸中の幸いというのも大げさだが、テントはレフトのライン際の深いところに張っていたので、彼らはテントにかまわず試合を始めようとしていた。まあ、こちらもかまわなくてもいいのだが、万が一、テントに当たって壊れでもしたら困るのでしぶしぶ撤収を開始して、いつもより早めに出発した。(つづく)
6月14日(水)晴れ
このルートの本州最高地点(といっても標高500メートル足らず)を過ぎ、一戸町、二戸市を通り、三戸町からは青森県に入る。この日は逆風が強く、1.5倍はエネルギーを消耗している感じ。少しくらいの下り坂ではこがないと全く下りてくれない。
国道といえども田舎道で食べるところもたいしてない。その日はそんな予感はしていたので朝から飯を炊いて食いだめして、キャンプ地と食事をするところを求めて逆風の中だらだらと前に進む。結局、八戸市まできてしまう。
食事をして、銭湯へ行き、キャンプ地を探す。馬淵川の川原におあつらえ向きの野球グラウンドをみつけ、レフトの外野の芝生にテントを張った。
(96.48km/6h23m・計1092.6km)
6月13日(火)曇り時々雨
出発してすぐににわか雨にあったりしながら、北へ進み、盛岡市を過ぎる。
このあたりはもう北上川からも離れ、これまで専門に泊まっていた川原も海岸もない山の中なのでキャンプ地を探すのがちょっと大変。のちに閉店後の「道の駅」の軒先でテントを張ってよく泊まるという旅人と会って、なるほどと思ったのだが、そのころはそんなことは考えもしなかった。
岩手町の道の駅の近くに彫刻公園という彫刻の立ち並んだ公園があったので、そのすみっこにテントを張った。
(89.71km/5h13m・計996.2km)
6月12日(月)曇り時々雨
出発してすぐに岩手県に入る。岩手に入った時点で追いつかれていた梅雨前線を抜き返したことになる。東北北部はまだ梅雨入りしていないのだ。
上り下りは多少あるが、順風で気持ちよく進む。
昼ごろには北上市に着く。ここから花巻までは自転車専用道が付いているのだが、川原に公園があって泊まるにはよさそうだったので今日はここまでにする。
自転車を洗車、整備などして、もう全く使っていなさそうなゲートボール場にテントを張った。
(88.72km/5h26m・計906.4km)
6月11日(日)曇り
石巻市へ。ここは石ノ森章太郎の生地らしく、彼のミュージアムがあり、009や仮面ライダーなどのキャラクターの像がたくさんあった。「バー009」というのがあり009に「おーおく」とルビがふってあった。
海から離れ、北上川を上る。この先の三陸海岸はリアス式海岸で道の上り下りがとても激しいと聞いていたので内陸を迂回することにしたのだ。うまい具合に内陸の北上川に沿って平地が続いている。
しかし、北上川はいくらさかのぼっても今までキャンプしてきた川のようにいい川原がなかった。全く川原がないか、広い川原があっても田んぼや畑になっているところが多かった。
夕方が近づいてきたころ、川原の背の高い草っ原の中に刈ったばかりの部分をなんとかみつけて入り込んでテントを張った。当然、トイレも水道もなかった。
持ってきていた米がなくなりかけていた。スーパーなどでは一番少ないパッケージは2キロで、自転車の旅人にとって2キロは重すぎるのでどうしようかとずっと悩んでいた。100円ショップで小さいパッケージを売っているというのを聞いていたのでみつけたら寄っていたのだが、どこも売っていなかった。
途中の田舎のなんでも売ってる個人商店でわけを話して米の量り売りをしていないか訊いたら、してはいないのだけどいいですよと、自分のうちで使っている米から量り売りしてくれた。500グラムだけ計って売ってもらった。
(72.71km/4h32m・計817.7km)
6月10日(土)薄曇り
未明に雨は止み、出発。
走っている途中で自転車のスピードメーターがまた動かなくなっていることに気が付いた。ちょうど仙台市を通るので新しいメーターを買おうと思ったのだが、うまく大きな自転車屋に行き当たらず(詳しい地図は重くなるので持っていない)、どんどん進んでいるうちにいつの間にか、またメーターが動き出していた。雨に濡れたのが動かなくなった原因のようだ。センサーが雨に濡れて動かなくなり、乾くとまた復活するらしい。30キロぐらいはカウントしていなかったようだ。
松島へ。さすがになかなかいい景色だ。
さらに進み、東松島のカンポの宿で温泉に入り、野蒜海岸でテントを張った。
(27.3km/?h?m・計745.0km 動かなくなっていた分ははいっていない)
6月9日(金)雨
予報通り、夜中から雨が降りだした。トイレと水道のあるところにテントを張っていてよかった。でも近くに店は全くなさそうなので、手持ちの食料でテントの中でじっとしているしかない。
本を読んだり、食事を作ったり、ラジオを聴いたりして過ごす。
この雨と同時に宮城県を含めた東北南部が梅雨入りした。あー、ついに追いつかれてしまった。梅雨に取り込まれてしまうと先に進めなくなってしまうのでなんとかしなければ。
降り出して半日でテントの四隅の縫製部分からじわじわと雨水が染み込んできた。量はたいしたことないのでとりあえず問題はない。
(0.0km/0h0m・計717.7km)
6月8日(木)曇り
順風に乗って進み、宮城県に入る。
阿武隈川の土手にトイレと水道があり、土手の外側にテントを張る。
この日、自転車のスピードメーターが一時動いていなかった。数キロ分カウントしていなかった。どこかが故障してしまったようだ。どうしよう。少し落ち込む。
天気予報は明日一日中雨だといっている。
(87.97km/5h12m・計717.7km)
6月7日(水)雨のち曇り
未明から雨が降りだした。夜が明けてからさらに雨は強くなり、雷も鳴りだした。ラジオを聴くと大雨洪水警報が出たとのこと。昼過ぎまで降り続くという。ここに連泊だろうか。
福島にきてから天気予報が分かりにくくなった。南部や北部というのではなく、「中通り」「浜通り」「会津」という地方区分で予報を出すので、そんな秘密の暗号で天気予報をいわれてもそれがどの辺のことなのか分からないのだ。
そろそろ梅雨が近づいてきているようだ。急がなくては。タイトルに「晴走雨読」と付けたように、雨の日は走らないことにしている。レインコートは持ってきているが、自転車には泥よけも付いていない。
幸い10時過ぎに雨が止んだので出発。双葉町まできたところで「海浜公園」の行き先指示看板があり国道をはずれて行ってみる。しょぼいキャンプ場があった。受付は開いておらず、水道はあるが、トイレもシャッターが閉まっていたので、勝手にテントを張った。
(66.91km/4h25m・計629.2km)