飛行機嫌い(乗ること以外)

前略、

ぼくは移動手段に選択の幅がある場合、タクシーよりバス、バスより列車、列車より船というように、より車体、船体の大きい、自由に動ける範囲の広いもの(しかも安ければいうことない)が好みで、飛行機は大きな海を越えるとき以外なるべく使わないようにしている。

飛行機は嫌いなのだ。
しかし、怖いからとか落ちるからとかが理由ではなく、乗ること以外の部分に嫌いになる理由が多い。

飛行機に乗るには事前に予約をしなければならず、同じ路線でも時期や航空会社、代理店によって値段がかなり違うのが面倒で、まず気に入らない。
そして空港はどこの国でも町から離れたところにある(でも成田より遠い空港ってあるの?)。
空港へも出発の1時間も2時間も前から空港に行かなければならないし、空港内は食べ物などが高いのが気に入らない(マクドナルドの安売りキャンペーンもだいたい空港ではやっていない)。
そしてこれはなぜかは分からないし、ぼくだけかもしれないのだが、空港にいる搭乗客がみんなバカみたいに見えるのだ。バス・ターミナルや駅ではそんなことは感じないのにどうしてだろう。へんにうれしそうではしゃいでいるからだろうか。

搭乗手続きでは大きな荷物は託送荷物として預けなければならない。自分の大事な荷物を手放して他人に預けるのが気に入らないし、荷物の中身が一部なくなったり、壊れたり、違う飛行機に積まれて何千キロも離れた知らない場所へ運ばれていってしまうことがあるのも気に入らない。

出国審査を済ませると、機内持ち込みの荷物の検査がある。ガスやオイルなどの可燃物、火薬、刃物、銃器などが持ち込めないのは当たり前だが、カメラの電池が持ち込めなかったこともあり気に入らない。ちなみに、水銀式の体温計なども本来持ち込み禁止である(なんで?)。

それらを済ませ、なんとか搭乗口までたどりつく。座って待っていると、ここでいつも必ずぼくの理解できない不思議なことが起こる。まだ開いてもいない搭乗口の前で、並んで待つ人が現れるのだ。それもかなりの数の人が何分も何十分も前からぞろぞろと並び始める。すでに搭乗手続きを済ませて、搭乗券を受け取り、座席の指定も受けているのに、搭乗口の前でぼけーっと立って待つことに何か意味があるのだろうか。
搭乗手続きのために早く来て並ぷのなら分かる。窓際に座りたいとか、通路側がいいとかの希望がある場合以外にも、航空会社はいつもキャンセルを見込んで予約を実際の席の数よりたくさん受けている(オーバー・ブッキング)ので、予約していても早く搭乗手続きしないと乗れないこともあるという(全く気に入らない)。その場合でも運がよければ、ビジネス・クラス、あるいは、ファースト・クラスに追加料金なしで乗せてもらえる場合もあるそうだ(それなら許そう)。
しかし、搭乗手続きをしてしまえばそういうことはない「はず」である。最近は爆弾テロなどを防ぐなど理由で、託送荷物を預けた客が全員搭乗したことを確認するまで出発しないことになっているほどなのである(どうしても客が現れなければ、その客の託送荷物を下ろして飛ぶ)。

いい加滅な三流の航空会社になると、搭乗手続きの際には席を指定しておきながら中は自由席ということもあるから、その場合は、まあ一応、並んで先に機内に入り込むことに利点がないことはないのだが、その他に利点があるとすれば、機内の新聞や雑誌を先に読めるというぐらいしかぼくには思い付かない(日本の新聞や雑誌をおいている航空会社には滅多に乗らないぼくにはこれもほとんど関係がない)。
いつも一番最後に乗り込むぼくが知らないだけで、なにか素晴らしい利点があるのであれば是非、教えてほしい。

機内に乗り込んでも、エコノミー・クラスの席はグレイハウンド・バス並みに窮屈で、出入りがしずらいのが気に入らないし、飛行機は始終出発が遅れ、よく欠航し、時々ひどく揺れ、たまに墜落し、まれに撃墜され、宇宙人に拉致されたりするのが気に入らない。

でも、本当をいうとぼくはまだ飛行機でトラブルらしいトラブルにはあったことはないのですが。

草々